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辻月丹はここにいる
 無外流祖・辻月丹物語

        青雲の章   第九回

 〜 少年辻月丹、
       江州岩尾山に登る 〜




天台宗息障寺

岩尾山は、甲賀と伊賀の間道の先にあり、山麓には天台宗息障寺(そくしょうじ)があります。参道の石段を登ると、木を組み合わせただけの質素な山門があり、そこを登りきると息障寺の本堂に出ます。 天台宗息障寺は最澄が創建した寺院で、ここには延暦寺建設のための木材の切り出しを妨害した大蛇を、最澄が祈祷で退散させたという伝説が残っています。

辻月丹は、息障寺の住持から茶をもらい、持参した握り飯を食べたと伝えられています。
住持は、こんな場所に少年が一人でいることを不思議がり、
「少年、今より何処へ行かれる?」
と聞くと、辻月丹は
「私の心の動静を試そうと、これから岩尾山へ登ります。」
と答えます。
住持は驚いて、
「この山は、伝教大師以来九百年余にわたって人跡の絶えた恐ろしいところだ。日が暮れれば、山道を往来する人もいない。まして、お前のような子供がこんな夕暮れに山に入るとは、いかなる了見だ?思い留まるがいい。」
と止めましたが、辻月丹は忠告を聞かず、
「お気遣い無用に願います。たとえ九百年、千年人跡が絶えていたとしても、すでに最澄様が登った山ですから、私に登れないはずがありません。それに、人跡が絶えたくらいの場所のほうが自分の修行にはふさわしいのです。」
と笑い飛ばして山に入ったのでした。

「土佐史談」によれば、このときの辻月丹は七日間の断食修行を実施したそうで、エピソードとして確認できるのは、あまり感心するようなものではありません。
たとえば、普通なら登山前に加持祈祷を受けるのですが、辻月丹はこれを退けました。
下山のときにも僧侶から、
「断食後、直ちに食すれば必ず死すと申し伝えたれば、粥を参らすべし」
と忠告されたのに対して、
「我等は飯ならでは適わず」
と答えて、七、八杯も大食したそうです。


  
   息障寺の奥の院へ
   続く長い階段

息障寺を出て1キロメートル以上も歩くと、辺りはすでに暗くなっていました。満天の星空を仰ぎながら山道をさらに深く入っていくと、高さ5メートルの不動明王麿崖仏の巨岩に出くわします。最澄が岩壁に彫ったと伝えられる石像です。辻月丹は、小枝を集めて不動明王の前に敷き、その上に端座して香を焚き目を閉じ夜を過ごしました。

辻月丹が瞑想にふけっていると、目の前に二つの火の玉が現れました。火の玉に気を取られていると、月丹は左右から両腕をつかまれ、地面に引き伏せられてしまいます。気がつくと、二人の男に腕を捕まれていました。
月丹は腕を振りほどくと、
「おのれ、何者だ!さてはこの山に潜む山賊だな。火の玉を使って領民を驚かせ金品を掠め取るとは憎い奴め!」
と、大声で一喝します。
しかし、二人の山賊は大笑いしながら、
「まだ乳臭い小童(こわっぱ)が何を言うか!この山が我等の根城とも知らず、のこのこやって来るとは、気が狂ったか。おとなしく衣服佩刀を脱いで渡せば命だけは助けてやる。」
と言い終わらぬうちに、辻月丹の真っ向斬りが炸裂し、山賊の一人が一刀両断されてしまいました。
これに驚いたもう一人の山賊は、あわててその場を逃げ出しました。

辻月丹は高らかに笑いながら、賊の死骸から首を切り取り、その髑髏(どくろ)を生涯持ち続けたそうです。後に江戸で道場を開いたときにも、この髑髏を褐色で円筒形の容器に入れて床の間に飾っていたと言われています。弟子たちの間には、この容器ごと音を立てて振れば、どんな病気も治癒するという噂が広まったそうです。

 
            幕末の春日大社参道の写真

また、奈良の春日大社に参拝したときには、兵法成就の霊験を見せよとばかりに、近くの御手洗川に自分の左手小指を切って流したとも伝えられています。しかし、後に描かれた辻月丹の肖像画には左手小指がはっきりと確認できますので信憑性については疑問です。
春日神社の鹿は、山口卜真斎の故郷でもある鹿島神宮からやって来たと言われているように、武人にとっては特別な場所のようです。おそらく辻月丹は、小指を切断したのではなく、誓紙に血判を押したか、あるいは小指の血で誓紙を認めて川に流したものと考えられます。


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