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 将軍謁見事件の真相  第四回


では、もう少し深く検証してみましょう。

そもそも、一介の浪人が将軍に謁見することなど有り得るのでしょうか?
将軍謁見のイメージ結論を言えば、有り得ます。江戸時代を通じて、たとえば新田開発に功績のあった農民が将軍に謁見した例もあれば、武芸者がその技を上覧した例もあります。浪人という身分に問題があれば、形式上は酒井家の家臣として謁見させる方法もあります。
こうした謁見願は、「駄目でもともと、とりあえず願書を提出してみよう!」というノリで行われるものではありません。提出前に、根回しに根回しを重ねて、しかるべき筋から許しがでてから形式的に書類を出すものなのです。
譜代筆頭の酒井忠挙の斡旋ですから、この謁見願いは幕閣のかなりの大物、少なくとも老中クラスから事前に許可が出ていたはずで、ほぼ確実だったのです。ですから、辻月丹が通説のように、「一度は許可がおりた」と仮に考えていたとしても、早合点とは言えません。

酒井忠挙は、いつ頃から将軍謁見を考えたのでしょうか?
宝永六年よりもかなり前だったのでしょうが、酒井忠挙が将軍徳川綱吉の時代に失脚したことを考えれば、綱吉に武芸者の謁見を願い出るなどとは思いもよらなかったはずです。

しかし、宝永元年(1704)十二月に、徳川家宣(当時はまだ江戸城西の丸大手門前綱豊と名乗った)が江戸城西の丸に入ったことで事情が変わってきます。西の丸は将軍の後継者が住む場所で、西の丸に住まいを移すこととは、次期将軍であることを内外に宣言することなのです。家宣と酒井忠挙に間には、綱吉時代のような確執がないわけですから、酒井忠挙としてはこの機会に家宣に取り入り、譜代大名筆頭の地位を強固にしたいという願望があったはずです。酒井忠挙は、家宣の武芸好きな点に目をつけ、歓心を買いたかったはずです。もし、家宣が芸術に興味をもっていれば、酒井忠挙は自身が庇護していた尾形光琳(おがたこうりん)を紹介したかも知れません。

酒井忠挙が召し抱えた尾形光琳の代表作のひとつ「国宝・燕子花図(かきつばたず)」徳川綱吉の武芸嫌い、家宣の武芸好きは、将軍家御家流の新陰流に対する二人の態度にも表れています。柳生家を遠ざけてほとんど新陰流の稽古をしなかった綱吉に比べて、家宣は柳生家からわざわざ家臣を派遣してもらってまでして熱心に稽古しています。恒例の正月稽古始めの儀式を取りやめたのも綱吉でした。
余談ながら、もし酒井忠挙が綱吉に武芸者を紹介したかったのであれば、これより十余年前にもっとふさわしい機会がありました。元禄十年四月六日、酒井忠挙の家臣の町田小助が、浅草三十三浅草三十三間堂の通し矢の図間堂の通し矢の大会で、新記録で優勝して江戸で大評判になっていました。将軍の歓心を買いたいのであれば、町田小助こそ適任者だったはずです。しかし酒井忠挙は動きませんでした。これは、因縁があり武芸嫌いの綱吉など、酒井忠挙の眼中には存在していなかったからに他なりません。

また、無外流にとってもラッキーなことがありました。家宣の西の丸入りに伴い、辻月丹の弟子である小笠原長重が本丸老中から西の丸老中に転任したのです。しかも、本丸には、酒井忠挙の娘・市子の姑であり、大老格の柳沢吉保がいます。家宣付きの老中・小笠原長重、大老格の柳沢吉保、という、幕閣の二大大物が辻月丹の弟子だったわけですから、酒井忠挙も謁見は許可されたのも同然と思ったことでしょう。

酒井忠挙は、柳沢吉保、小笠原長重ら幕閣、そして大学頭の林信篤(はやしのぶあつ)らに相談・根回しをして、OKの返事をもらって御目見得願を提出したのです。
しかし、将軍家宣への謁見はかないませんでした。
将軍就任一年目でもあり、単に多忙だったからと考えるべきなのでしょうか?それは正しくないと思います。なぜなら、これまで将軍家から遠ざけられていた柳生家(新陰流)と小野家(一刀流)の上覧演武が、この年に復活しているからです。


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