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無外流兵法譚
史談往来 〜 無外流兵法譚
辻月丹はここにいる
 無外流祖・辻月丹物語
      噴火の章   第12回

 〜  無外流と居合
        伊藤将監東下り 〜


無外流兵法(剣術)の教義のなかに居合の技があった根拠として、従来から取り上げられる二つのエピソードがあります。
ひとつは、江戸の辻月丹のもとに師匠の伊藤将監が訪ねてきて、月丹の居合の技を見たというエピソードです。もうひとつは、辻月丹が杉田庄左右衛門の仇討の助太刀をした逸話で、月丹が授けた居合の技で杉田が本懐を遂げたというストーリーです。


   歌舞伎「敵討天下茶屋聚」に
   登場する伊藤将監
「伊藤将監東下り」の話は、都治文左衛門資賢の口述として残っています。
無外流を創始した直後の江戸の辻月丹のもとに、山口流剣術の師だった伊藤将監が京都からやって来ます。おそらく天和3年頃と考えられます。
伊藤将監は、辻月丹の永年の精進を賞賛するとともに、月丹が無外流を興こしたことを喜びました。
このとき、辻月丹は師匠に2つの技を披露したと言われます。
それは、およそ剣術の技らしからぬもので、ひとつは体当たり、もうひとつは抜刀の妙技でした。

都治文左衛門資賢の口述書には、次のように記されています。

サテ(月丹)翁申サルゝハ我工夫ヲ以テ体当リト申事仕候。イザシテ御目懸ケン

と言って、伊藤将監を相手に体当たりを披露します。伊藤将監は、稽古場の壁板まで飛ばされてフラフラになりました。
さらに、

土器(カワラケ)ニ油ヲ入レ焼火ヲシテスヘ置キ、居合刀ヲ持テ土器ノフチト燈心ノ間ヲ目当タカワス。抜付ケニ切ラレシカ燈火ハ消テ土器ハソ其マゝ自若タリ


   時代小説では、辻月丹がロウソク
   の炎を消した描写になっているが、
   これはデタラメである。時代考証的
   にもおかしい。本当は、図のような
   皿に油を貯めて、浸した芯に灯っ
   た火を消したのだ。
と、居合の妙技を披露します。
伊藤将監はこれをもう2回所望し、月丹が計3回とも成功させたので、大いに感心したと言うことです。

我々は、体当たりについては、じつは無外流の特徴だったのではないかと考えています。
無外流が「後の先」ではない、野獣的で先手攻撃的な剣法だった「先々の先」と解釈すれば、体当たりで敵の機先を制する、あるいは体当たりのように敵の懐に入って行く(入り身)という意味で理解できます。

「辻月丹物語・青雲の章」では、杉田庄左右衛門と陸奥守山藩主・松平頼貞(大学頭)との3本勝負のエピソードを紹介しました。杉田に2本を取られた松平頼貞が、3本目は捨て身の体当たりを試みたという話です。これも、松平頼貞が2本を取られて頭に血が上ったように伝わっていますが、じつは杉田から体当たりされたので頼貞がやり返したという解釈をすれば辻褄が合います。松平頼貞は単に逆上して体当たりに至ったのではなく、杉田の無外流を真似て自分から「先々の先」を仕掛けたのです。

では、その杉田庄左右衛門の仇討も実話なのでしょうか?

辻月丹の弟子のなかでも、辻右平太、都治記摩多資英、森下権平とならんで有名なのが、杉田庄左右衛門です。土佐藩士の森下権平が辻月丹に入門するのが宝永年間なのに対して、杉田庄左右衛門はそれよりも30年も前の延宝年間から月丹門下に加わっています。(辻右平太と都治記摩多については、「辻月丹物語・不死鳥の章」で取り上げます。)

杉田庄左右衛門の仇討話は、大正14年の「日本剣道史」(山田次朗吉著)にはじめて登場します。

月丹門人杉田庄左衛門といふ者。麹町一丁目半蔵門堀端にて親の敵を討ちこと評判となつて無外流の名一時に喧しくなつた。

                「日本剣道史」山田次朗吉著

この話は、昭和13年の「無外全書」(中川申一著)でも紹介され、同著では、杉田が月丹から「走り掛かりの一太刀」を伝授され、これで見事本懐を遂げたとあります。さらに杉田の居合のイメージは、後に池波正太郎、村上元三、戸部新十郎らの小説にも継承され広まることになります。とくに池波正太郎の「剣客商売」では、杉田庄左右衛門は後に辻記摩多と名前を変えて辻月丹の跡を継いだという説が述べられています。

これらの話は、はたしてどこまで信頼できるのでしょうか?
じつは、この杉田庄左右衛門の仇討こそ、辻月丹の運命を大きく変える事件だったのです。




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